内科・呼吸器科:田中クリニック 集中治療室
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  集中治療室  
今月の医療特集
●9月の特集は『アスベストの健康被害について』です。

今回は話題になっているアスベストの健康被害について特集してみました。
報道などで大きく取り上げられたためか、健康を心配する人も多く私にも相談がありました。ごく身近でアスベストが使われていることを知っていた人は少なかったと思います。作業で取り扱う人以外での発病はまれとされていますが、心配な方は参考にしていただければと思います。

1. アスベストとは?
アスベスト(石綿)は天然に産する繊維状けい酸塩鉱物です。工業材料として防音材、断熱材、保温材などにはば広く使用されていますが、現在ではその有害性のために製造は禁止されています。
アスベストはその存在だけでは問題となりませんが、その繊維が極めて細かいために、吸い込んでしまうと肺の奥まで入り込み、病気を引き起こすことになります。
 
2. アスベストが原因で発症する病気

1) 石綿肺
肺が繊維化してしまい、肺のふくらみが悪くなる塵肺のひとつです。症状は咳や呼吸困難です。アスベスト粉塵を10年以上吸入した労働者に起こるとされています。潜伏期間は15年から20年。確立された治療法はありません。

2) 肺癌
吸入した石綿繊維の物理的刺激により肺癌が発生とされています。15年から40年の潜伏期間があり、暴露が多いほど癌の発生も多くなります。

3) 胸膜中皮種
肺を覆っている胸膜にできる腫瘍で、良性と悪性があります。胸水がたまるびまん性型と腫瘤を形成するタイプがあります。悪性は手術不可能であれば予後不良ですが、以前に比べれば抗がん剤治療成績がよくなっています。潜伏期間は20年から50年と言われています。

 
3. アスベストの健康被害はどのように調べますか?
胸部のレントゲン撮影である程度検出できます。小さな病変や胸膜の肥厚についてはCTのほうが有用です。確定診断のためには、気管支鏡下や経皮的に生検(組織を採取して調べること)が必要になってきます。
 
4. 中皮腫や肺癌の発症を予防するにはどうすればよいですか?
中皮腫に関しては、予防手段として有効なものは明らかではありません。肺癌については、石綿暴露と喫煙の組み合わせで肺癌の発症は相乗的に増えるとされており、禁煙が予防に重要です。
 
5. 石綿工場の近くに住んでいたのですが、心配ないですか?
石綿は昭和30年代ころより製造されていました。そのころの工場周辺住民について、中皮腫や肺癌の発症が有意に多いかどうかは、現在調査中ですが、8月28日の朝日新聞一面に工場の半径500m以内に居住歴がある人で、アスベストによるとみられる中皮腫による死亡率が全国平均の9.5倍になるという記事が掲載されました。
工場に近いほど発症するリスクが高いようですので、心配な方は健康相談および診断をうけてください。
 
6. 石綿暴露歴があり、健康被害が認められた場合どこに相談すればよいか?

石綿による健康への影響などについては、保健所、各都道府県産業保健推進センターまたは労災病院までご相談ください。補償などに関しては労働基準監督署が窓口となります。

アスベストを扱う仕事に従事していました。今後どのような症状に気をつけるべきですか?
特異的な症状はありませんが、次の症状があれば医療機関を受診しましょう。
・ 咳や痰が出るようになった、以前より増えてきた
・ 息切れの出現
・ 痰に血が混じる
・ 風邪をひいて、治りにくい
・ 動悸がする
・ 発熱
・ 食欲不振や体重減少

 
7. 建築物に吹き付けアスベストが使用されていますが大丈夫ですか?
アスベストは非常に小さく砕かれない限り、肺の奥まで吸い込まれることはありません。ですから通常の生活には心配ありませんが、解体作業をする方は吸入するリスクが高まりますので注意が必要です。
また、吹き付けられたアスベストが劣化等により粉じんを発散させ、その粉じんにばく露するおそれがあるときは、除去、封じ込め、囲い込み等の措置を講じなければならないこととされています。
 

さいごに...
この記事を書いている途中で、工場周辺の中皮腫死亡率が高いという新聞報道を読み、タイムリーであったと同時に、死亡率の高さに驚いています。しかしアスベストを取り扱っていない方や工場周辺に住んでいない方は、ほとんど心配ないと思われます。
神経質になられることはないと思いますが、健康診断などで年1回はレントゲンを撮っておけば良いと思います。

参考:
厚生労働省「アスベスト情報」
日本呼吸器学会「アスベスト健康被害に関するQ&A」

 
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